ごろん、と寝転がって空を見上げる。背中から落ちて、そこから段々と全身に衝撃が走る。痛い、と思ったのはがそこへ落ちてから一間おいた後だった。太陽がじりじりと照りつける。にじみでてくるのは汗か悔しさか。空は今日も青い。

「あちゃーいたそ…だいじょぶ?」
「大丈夫って、自分でこうしたくせに。本当にあんたって性格悪い」
「そんなの、が弱いのがいけないんじゃん」

まんまるい宝貝に乗り、ふわふわとうきながら李興覇は私を見下ろす。たとえ逆光になっていったってわかる。やつは今、笑っているのだ。
そもそも李興覇と修行をしたのが間違っていたのかもしれない。楊森なら私を気遣いながら(しかも彼はすぐに回復してくれる)稽古してくれるだろうし、王魔は気を抜かないだろうけどそれでも配慮してくれるだろう。高友乾…はあんまりやりたくない(というかきっと付き合ってくれない)。だけどきっと、李興覇よりはマシだ。こいつは、性格が悪すぎるのだ。

「まあが弱いっていうか、僕が強いだけかもしんないけどね」
「ああそう」
「あれ。興味なさげだ。もしかして気落としてるの?」
「別に」
「そんな気にしなくてもいいんじゃないのー。宝貝同士の相性もあるんだろうしさ。正直、君の宝貝じゃきっと僕には勝てな」
「うるさい」

が李興覇の話を無理やりさえぎる。「少し黙ってよ馬鹿」全く、こいつには本当にデリカシーの欠片も何もない、最低なやつだ。なんでこんな奴に稽古を頼んだのか、は未だにわからない。李興覇が何か言っている。ごめんと言ったのか何それと言ったのか、どちらにしろその声は小さすぎての耳に届くことはなかった。

太陽がじりじりと照りつける。にじみでてくるのは汗か悔しさかそれとも涙か。空は今日も青い。太陽をさえぎるように、あぐりに影がかかる。目を閉じているあぐりには、李興覇の優しさは伝わることはない。



(エレファントの涙/2006.10.15 なぎこ)
(李興覇は、手加減というものをしらないが、人を見捨てきれないところがある。
だから妙に甘かったり、無駄に気遣ったりする。
それが相手を一番傷つけているということを、彼はまだ知らない。
だって奴はやさしい言葉をかけようとしないから。そこは幼いプライドが邪魔をしている
そしてその幼いプライドは、彼にとっては巨象よりも大きい。
これがなきゃ彼はこの世界とあの実力で生きていけなかったんじゃないかな)